もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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グローバル・インターベンション

最近の循環器の学会や研究会では
グローバル・バスキュラー・インターベンションという言葉が
ひとつのキーワード、トレンドとなっています.

これまでは、カテーテル治療を専門とする循環器医の仕事といえば
心臓の冠動脈の治療が主体でした.

動脈硬化という疾患は全身の血管の病気であり
狭心症や心筋梗塞の患者さんが、脳血管障害や末梢血管疾患を合併する率も
高いことが知られてきています.

2008年の4月より頸動脈狭窄のカテーテル治療が保険認可され
頸動脈のカテーテル治療(CAS)に
多くの循環器医が参加するようになりました.

さらに同様に末梢血管疾患の治療や腎動脈狭窄の治療に対しても
循環器医が積極的に参加し関わるようになりつつあります.

これまでの心臓病の動脈硬化の治療を
コロナリー・インターベンション(Coronary Intervention)とすれば
心臓だけでなく全身の血管の動脈硬化の治療を行っていこうという方針を
グローバル・バスキュラー・インターベンション
Global Vascular Intervention と呼ぶことになります.

今回の CCT 2009においても、心臓病のカテーテル治療だけでなく
全身の様々な部位の血管、大血管の治療が取り上げられ
まさしくグローバルな治療の学会となっていました.

グローバル・インターベンション_a0055913_024565.gif






CCTという学会も名所についても
以前は CCT= Complex Catheter Therapeuticsでしたが、
最近は CCT = Complex Cardiovascular Therapeuticsとなっていて
グローバル・バスキュラー・インターベンションを意識した名前になっています.

これは時代の要請として、循環器医が心臓だけを診るのではなく
全身を診療していこうという これからの新しい時代の方向性なのです.

カテーテルを専門とする循環器医(インターベンション医)の仕事は
心臓病のカテーテル治療以外に、現在では

・下肢動脈のカテーテル治療

・鎖骨動脈のカテーテル治療

・頸動脈のカテーテル治療

・透析シャントのカテーテル治療

・大動脈疾患のカテーテル治療など、多岐にわたっています.

さらには以前より行われていた、僧帽弁狭窄のカテーテル治療に加えて
大動脈弁狭窄症をターゲットとした経皮的弁膜症の治療も
始まろうとしています.

さらにはASD、VSD、卵円孔開存などの先天性心疾患のカテーテル治療も
日本での普及が進んでいくと思われます.

私も横井先生の本を読んで勉強しました.

 グローバル・バスキュラー・インターベンション―頸動脈から下腿動脈まで
 横井 良明 編集

グローバル・インターベンション_a0055913_033194.gif


タイトルの通り様々な全身の血管のカテーテル治療について
解説した医学書です.

糖尿病の患者さんが、様々な動脈硬化疾患を合併することは
良く知られた事実です.
心臓病のカテーテル治療を行う方の中で
糖尿病は重要な問題です.

つまりは心臓病をカテーテルで治療しても、心臓病を発症したのと同じように
脳血管障害やその他の末梢血管の動脈硬化を起こす可能性が
かなり高いわけです.

これからのカテーテル治療医、循環器医は
心臓病のカテーテル治療を行って それでよしとするだけではく
カテ後の長い経過の中で、全身の血管の動脈硬化の早期診断、治療も
行っていく必要があります.

これがグローバル・バスキュラー・インターベンションです.

実際には、循環器の外来では心臓病のカテーテル治療後の
経過観察だけではなく
同時に合併する可能性のある様々な血管の動脈硬化についても
きちんと検査を行っています.

通院されている患者さんの皆さんには、検査ばっかりと
嫌がられるかもしれません.

頸動脈の狭窄を治療すれば、将来の脳梗塞を予防することができるのです.

腎臓の血管(腎動脈)の狭窄を早期に発見して治療すれば
将来の腎不全、透析導入となることを未然に防ぐことも可能になるのです.

足の血管(下肢動脈)の治療を行えば、下肢切断などの
将来の怖い合併症も予防することに繋がります.

ぜひご理解していただいて積極的に様々な検査に参加していただきたいです.

私たちも今回のCCT 2009への参加を契機にして
グローバル・バスキュラー・インターベンションを徹底したいと思っています.

循環器医が、様々な他科の専門医と強力して
全身血管管理のための主治医となるということです.

私が毎週 外来を手伝いに出かけている 春日井市の灰本クリニックでは
さらにもっとすごい試みを行っています.

3年前から私が灰本先生の外来をお手伝いするようになり
このクリニックでの狭心症の診断、治療が格段に進み
かなりの数の患者さんを、急性心筋梗塞を起こす前に
予防的に治療を行ってきました.

さらにこのクリニックでは、頸動脈エコーをはじめとする全身の健診を
積極的に行っており、全身の動脈硬化についても早期診断がされています.
まさにグローバル・バスキュラー・インターベンションの実践です.

灰本先生のクリニックでは、がん検診にもかなり力を入れており
胃がん、大腸がん だけでなく、肺がん、膵臓癌、前立腺癌、
腎臓癌、乳がん、子宮癌などの健診も定期的に積極的に行い
一つのクリニックとしては驚異的な数の早期がんを見つけています.

循環器を専門とする私から見ると、本当に凄いことです.

循環器にかかって心臓病をきちんと治療されている方は
心臓病の悪化がかなり改善されるようになりました.

急性心筋梗塞も早期診断と早期治療により、予後も劇的に改善しています.
急性期をなんとか乗り越えて5年、10年通院されている方も増えていきます.

年輪を重ねると、がん を合併する確率も増えてくるわけで
循環器の主治医として、心臓以外の疾患への注意を怠っていると
心臓は治したが、がんを見落として悪くなったということも怒ってしまいます.

そこで現在は、灰本先生と私の二人の強力で
心臓病、血管疾患の治療に、ガンの診断治療を加えることで
全身的、総合的な診療を行うことをめざしています.

今度は、血管だけの治療だけではなく、もっと多くの病気をも包括した
グローバル・インターベンションをめざすということです.

薬剤溶出ステントの登場により
狭心症の再発は激変しました.

しかしながら、一生涯、心臓病の治療のために
バイアスピリンなどの抗血小板薬を継続することとなり
循環器医は、カテーテル治療を受けられた人を長らく診ていくことになります.

通院治療のある時点で がんが見つかった時には
ガンの外科的治療のために、手術のために心臓機能の評価を行うだけでなく
心臓病の内服の管理、抗血小板薬などの薬剤の手術前後での管理に
循環器医も積極的にガン治療医と強力していくことになります.

そんなわけで、いささか理想的ではありますが
少ない人員でいろいろな仕事をやっていくのも大変ではありますが
循環器医が(そして同じ意味合いで内科医が)
心臓病、脳血管障害、そしてガンについても 一生涯
主治医として その責務を果たしていきたいと思います.

みんなで理想のグローバル・インターベンションを目指しましょう.
by yangt3 | 2009-02-02 00:04 | コーヒーブレイク(雑談)