もはや東可児病院循環器科の非公式ブログです(^.^)


by yangt3
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2006年 02月 04日 ( 3 )

コンスタント先生 講演会の抄録 心不全の治療
H18年1月28日(土)に行われたコンスタント先生の
講演会の抄録の続きです.
コンスタント先生の講義の記事は、今回が最終回です.

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コンスタント先生の講義では、心不全の治療として
時間の関係で、ジゴキシン、利尿剤だけしか
語られませんでした.
ジゴキシン、利尿剤は、いわば、”古典的”な薬剤であり
実際の心不全の治療においては、これらの治療だけでなく
他の様々な薬剤が用いられています.
現在、心不全治療として主流なのはACE 阻害剤、AII受容体拮抗薬(ARB)、
β拮抗剤などです.
前回、コンスタント先生が講義された心不全の分類 NYHA 分類を元に
治療を考えると
NYHA I から段階的にこれらの薬剤を 心不全の進行、NYHA分類の
重症度の進行に合わせて考慮、組み合わせて治療を行います.

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特筆すべきは、利尿剤、ジゴキシンよりも
ACE阻害剤、AII受容体拮抗薬、βブロッカーを心不全の早期から
使用したほうがよいということです.
利尿薬に関しては、コンスタント先生の講義に準じて
NYHA 2 度以上の呼吸困難が出現した場合に、ラシックスを投与開始します.
(この場合、浮腫も出現する.もちろん浮腫のために利尿薬を投与するのではない)
ジゴキシンは、心房細動を伴う心不全において投与を開始します.(NYHA 2度以上)

心不全において最も有効な治療薬とは、心不全の神経系
(自律神経、カテコラミン、交感神経など)
を制御する薬剤、そして液性因子を調整する薬剤
(レニン-アンギオテンシン系の調節因子など)です.
これら心不全の異常な神経系の反応、液性因子の反応を制御、
治療する薬剤が
最も有効な薬です.ACE阻害剤、AII受容体阻害剤、β拮抗薬、
アルドステロン(スピロノラクトン)は
こうした有用な効果を持つ薬です.
利尿薬は、呼吸困難(SOB、肺うっ血)など、
容量負荷による症状を改善するための薬剤ということです.
いわゆる強心薬と呼ばれる薬剤(心筋細胞内のcyclic AMP、
カルシウム濃度を上昇させる薬)は
長期的には、心不全の死亡率を増加させることがわかっています.
急性心不全には有用な、これらの強心薬と呼ばれる薬剤も、
慢性心不全の長期的な予後はは、悪化させます.
強心薬の長期使用により、心筋ダメージが促進され、
心筋細胞のアポトーシスが進行することが原因です.
ジギタリスは長期予後に有用な神経液性因子調整作用と、
強心薬作用とを合わせ持っています.

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最近の慢性心不全治療の傾向としては
強心薬はできるだけ使用せず、これ以上の心筋ダメージを
起こさないようにすること、傷ついた心筋を休め、
余分な刺激を与えないようにするという方針になります.
心不全の長期予後を改善することが証明されている薬剤は、
・ACE阻害剤
・AII受容体阻害剤
・ベータ拮抗薬
・スピロノラクトン(アルドステロン阻害剤)などです.
利尿薬は、呼吸困難の症状軽快のために使用されます.
ジゴキシンは、心不全患者の運動耐用能の改善のために使用されます
あくまで少量投与で、腎不全、高齢者には慎重投与で.
それ以外の薬剤については(強心薬など)、
慢性心不全の治療には、有害ですらあります.

最近、重症心不全に対して、心臓再同期法
(CRT ; Cardiac Resynchronization therapy)が
行われることもあります.これは、両側心室へのペースメーカー植え込みにより
心不全の収縮の同期を行い、心不全の改善をはかる治療です.
日本でも、先進的な循環器施設で研究が進められています.

重症心不全であらゆる薬剤治療に抵抗性の場合は、
人工心臓を用いた治療や、心臓移植でしか救命できない症例もあることは
皆さんもご存知の通りです.

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今回のコンスタント先生の講義をきっかけにして
心不全の知識を整理し
今後も新しい知見について勉強する必要性を痛感しました.

コンスタント先生にあっては、今回
わざわざ可児の地までおいて頂きまして、本当にありがとうございました.
病院を代表して、ここにお礼を述べさせていただきます.
また機会があれば、先生のお話を
聞かせていただきたいと思います.

循環器科 進 文責
by yangt3 | 2006-02-04 23:57 | コンスタント先生
果物と野菜を食べることによって脳卒中のリスクが減少する可能性
Lancet 1月30日
果物と野菜を食べることによって脳卒中のリスクが減少する、とのコホート試験のメタ分析の結果が『Lancet』1月30日号に掲載されました.「果物および野菜の平均摂取量は、ほとんどの先進国で1日当たり約3単位であるが、現在の勧告では、1日当たり5単位以上を摂取することが勧められている」MEDLINE、EMBASE、コクランライブラリーの検索、および検索された論文の参考文献から、果物および野菜の摂取頻度に関する脳卒中の相対危険度(RR)とその95%信頼区間について記載している研究を選別した。a0055913_2294399.jpg選別基準に合致したのは、互いに関係のない九つのコホートについて評価を行った8件の研究であった。これらの研究には、被験者257,551が登録されていた。これらの被験者は平均して13年間にわたって観察を受け、その間に4,917件の脳卒中が出現した。果物および野菜を1日当たり3単位未満摂取した被験者と比較して、1日当たり3から5単位摂取した被験者の脳卒中の統合RRは0.89(95%信頼区間 0.83-0.97)であり、1日当たり5単位以上摂取した被験者ではRRは0.74(95%信頼区間 0.69-0.79)であった。サブグループ分析によって、果物および野菜が出血性脳卒中だけではなく虚血性脳卒中の危険性も有意に減少させることが示唆された。「果物および野菜の脳卒中に対する予防効果には、説得力のある生物学的根拠がある」と著者らは結論付ける。「果物および野菜は、カリウム、葉酸、食物繊維および抗酸化物質(ビタミンC、ベータカロチンおよびフラボノイド)の宝庫である。血圧上昇が脳卒中の主な原因であるため、血圧低下作用のあるカリウムが、果物および野菜の摂取量増加に伴う脳卒中の危険性減少に寄与する重要なメカニズムの一つである可能性はある」。果物および野菜の摂取量不足は健康障害による苦難の要因の一つであり、重大ではあるが改善可能なリスク因子である」

心臓、脳血管障害の予防に食事、運動の重要性が叫ばれて久しいですが
あらためて、果物、野菜を食べることで脳卒中のリスクを減らすことが
できるというデータが出されました.
記事にあるように
果物、野菜の摂取は、日常の食習慣の改善により矯正可能です.
バランスのとれた食事、果物、野菜の十分な摂取、
運動で、脳卒中のリスクが減らせるとしたら、
随分安く付くものだと思います.
by yangt3 | 2006-02-04 22:10
H18年1月28日(土)に行われたコンスタント先生の
講演会の抄録の続きをお届けします.

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心不全の治療として、前回 お話があったジゴキシン以外に
利尿薬もよく用いられる薬剤です.

利尿剤は、腎臓においてナトリウムの排泄を増加させることによって
尿量を増加させる薬剤です.
高血圧、急性および慢性心不全、浮腫などの使用されます.
コンスタント先生は、心不全において利尿剤を投与する時
浮腫を目安にするのではなく
呼吸困難(つまり肺うっ血の程度とか、左心房圧の上昇を意味する)を
目安にして利尿剤を調整するべきであることを
強調されていました.
心不全の呼吸困難を治療するための薬が利尿剤という考え方です.
患者さんへの説明としても、呼吸困難を改善するために投与するとします.
くわしくは、上昇した左心房圧を下げるため、
うっ血の改善のために利尿剤を投与することになります.

実際に使用されるのは次の3種類です
・ラシックス(フロセミド)ループ利尿薬
・フルイトラン(サイアザイド)
・アルダクトン(スピロノラクトン)
使用に当たって注意すべき点は、K保持性かK喪失性かということ、
腎機能低下症例に使用できるかどうかということです.
ラシックス、フルイトランはK喪失性であり
逆にアルダクトンは、K保持性です.

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1)ラシックス(フロセミド)ループ利尿薬
主に腎臓 腎尿細管のHenle 上行脚に作用し、ナトリウムの再吸収を阻害します.
結果的にナトリウムの排泄が増加し利尿が得られます.
心不全の治療に最も標準的に使用される薬剤です.
急性肺水腫や、急性心筋梗塞の左心不全による肺うっ血に対して
ラシックスは初期治療として有用です.
ラシックス投与により、利尿、尿量の増加が得られる前に
肺うっ血による呼吸困難の改善が得られます.これは、ラシックスの
血管拡張作用や、前負荷の軽減、およびそれによる左心房圧の軽減に
よるものです.
 ラシックスの特長としては、作用が強力であること、
腎機能低下症例でも使えることです.
さらに上記のようにK喪失性です.
 ラシックスの投与によって
カリウム(K)、カルシウム(Ca)、および水溶性ビタミン(Vit B、Vit C)の
喪失が起こりますので、補充が必要になります.
逆にラシックス投与により尿酸が上昇し、高尿酸血症も稀ではありません.

2)フルイトラン(サイアザイド)
 昔は高血圧の第一選択約として使用されていました.
(年配の医師によく処方されています)
作用として、腎臓 ネフロンの 遠位尿細管におけるナトリウムの再吸収抑制により
ナトリウム排泄の増加を介して、利尿ガ得られます.
ラシックスに比べて、利尿作用が弱く、心不全の治療としては弱い効果です.
ラシックスと同様に使用にて低K血症となります.
フルイトランに特徴的なことは、耐糖能異常があります.
フルイトランの投与により血糖の上昇が見られますので注意が必要となります.
この薬剤では、カルシウムの排泄は阻害されません.逆に高Ca血症に注意が
必要となります.
実際には心不全治療の第一選択として用いられることは少ないです.
日常診療では、
高齢者の軽症高血圧、女性の高血圧などへの使用
(カルシウム排泄が抑制されないため)
軽症心不全の浮腫の軽減のために 使用されることが多いようです.

もちろん、コンスタント先生の講演をお聞きになった方なら、おわかりのように
あくまで利尿薬は、呼吸困難(肺うっ血、上昇した左心房圧)を
改善するために使用する薬剤であるということです.

3)アルダクトン(カリウム保持性利尿薬)
 腎臓 ネフロンの遠位尿細管のおいてアルドステロンに拮抗し
アルドステロン依存性のナトリウム/カリウム交換を抑制する作用です.
この薬剤においては、ラシックス、フルイトランと違い
低カリウム血症は起こりません.逆に高カリウム血症を来すおそれさえあります.
特にラシックスと併用してカリウム製剤を投与している場合には、
アルダクトンの使用により、一気に高カリウム血症に至る恐れがあります.
その他の副作用としては、講義でも触れられていたように
女性化乳房があります.
 コンスタント先生が講義で触れられていた新しいカリウム保持性薬剤では
これらの副作用も軽減されています.
アミロライド(Amiloride)がそのお薬ですが、残念ながら日本では使用できません.
アミロライドは、アルドステロンとは関係なく遠位尿細管で
ナトリウム / カリウム交換を阻害し利尿をはかります.

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利尿剤で重要な知見として
SOLVD Study という臨床研究があります.この研究で、心不全において、
カリウム非保持性利尿薬
(ラシックス、フルイトラン)を使用した群では、カリウム保持性利尿薬を
使用した群と比べて不整脈による死亡が多いことが判明しました.
この話には、続きがありカリウム非保持性利尿薬と、
カリウム保持性利尿薬を併用することにより
このような不整脈による突然死のリスクを減少させることができます.
このようにスピロノラクトンの併用が心不全の予後改善に
優れた効果を示す臨床試験の結果が判明しています.

心不全の治療にあっては、ラシックスにアルダクトンを加えた治療が有用です.

カリウム非保持性利尿薬(ラシックス、フルイトラン)の使用にあっては、
電解質チェック、腎機能チェック、不整脈のチェックなどの
合併症に対する注意が必要です.
by yangt3 | 2006-02-04 08:43 | コンスタント先生