最近は90%以上の症例において薬剤溶出ステント
すなわち Cypherステントが用いられている現状です.
日々薬剤溶出ステントを使用した経験からは
従来の非薬剤溶出ステントと比較して、再治療
(つまり症状の再発)が激変した印象でした.
最近の研究で薬剤溶出ステントはベアメタルステントに比べて
PTCA後の再インターベンションの必要性を
大幅に減少させることを示されています.

ステント植え込みの手技上の問題も
経験を重ねてきておりますし
治療後の薬剤(アスピリン、パナルジン)の使用方法も
症例を重ねてノウハウが蓄積されています.
1昨年に登場した薬剤溶出ステントも
現在、狭心症、虚血性心疾患治療の中心的な役割を
果たしている状況です.
現在、次の世代の薬剤溶出ステントが臨床での使用を
控えており
またパナルジンに代わり、副作用を減じた坑血小板薬の
臨床現場での使用も間近です.
みなさんに安心して
カテーテル治療を受けていただけるように
今後も努力を続けて行くつもりです.
パナルジン2T/日、バイアスピリン2T/日を継続して
内服する必要があります.
東可児病院では、桜井院長が脳神経外科専門のため
脳卒中の治療のために、多くの方がパナルジンを内服しておられます.
長期投与されている患者さんも多く、
パナルジンの指導、副作用については、医師、看護師、薬剤師ともに
熟知しております.
治療のために植え込みした薬剤溶出ステントが、
本来の治療効果を発揮させるために
特にパナルジンはしっかり服用する必要があります.

(2)歯科での抜歯の際にはどうするか
ステント植え込み後 2週間は、薬剤の中止により
ステントの急性血栓が発症するおそれがあります.
ステント留置後少なくとも約2週間ぐらいは、
激しい運動や汗をかくこと等を避けるのが望ましいです.
運動は1ヵ月ぐらいして状態が安定してから行うほうが理想的です.
さらに、脱水状態を避けるためにしっかり水分補給をし、
血液が濃縮しないように
十分に留意する必要があります.
厚生省の指導では、植え込み後3ヶ月は
パナルジンを続ける必要があります.
その後もバイアスピリンは、できるだけ続行する必要があります.
歯科医院で抜歯する際に、薬を止めないと手術しないと言われた場合
どうしたらよいのでしょうか.
その場合には、必ず循環器担当医師に相談して頂くようにお願いします.
少なくとも植え込み後2週間は、抜歯などの処置も延期するほうが
望ましいです.
それ以降でも、ステント後の薬剤の中止に関しては
循環器担当医の管理下で行う必要があります.
(慢性血栓閉塞の問題がありますので)

(3)東可児病院は、近隣の開業医の先生方と
密接な病診連携を行っており
治療後の内服続行、血液検査については、かかりつけ医で
行っていただくことも可能です.
皮疹や肝障害などの副作用が出た場合は、
当院循環器科にて対応させていただきます.
基本的な方針としては、パナルジンを中止して
アスピリンのみを継続しています.
ステント留置からの経過時間が、薬剤中止可能の目安になります.
留置後1ヵ月以内に副作用が出た場合は、
パナルジンを中止しクロピドグレル投与が理想です.
ただし、現在、クロピドグレルはまた使用できませんので
基本的にプレタール(シロスタゾール)で代替します.
留置後2ヵ月以降は、そのままアスピリン単独投与となります.
バイアスピリンでも副作用がないわけではありません.
アスピリン単独となっても副作用に注意して内服を続けます.
胃潰瘍出血、外傷、脳出血の場合は、アスピリンもパナルジンも
中止せざるを得ません.
外科手術の場合、循環器的な立場からは可能な限り
アスピリンとパナルジンの継続をお願いします.
時には、ヘパリン持続点滴で対応することもあります.
外科医と循環器科医との連携が必要になります.

幸いに現在の薬剤溶出ステント Cypherでは、
重篤な合併症は経験しておりません.
以前の非薬剤溶出ステントの時代には、ステント植え込み後に
緊急手術のために、アスピリン、パナルジンを中止、
代わりにヘパリンを持続投与しましたが、手術後3日目に
ステントの血栓症により心筋梗塞が起こりました.
すぐに、緊急カテを施行し、追加ステント植え込みにより
問題なく軽快しています.
心配されるのは、日常的なことがどこまでできるかということです.
車の運転も生活にかかせないものであり、多くの方が心配されます.
基本的な方針としては、カテーテル治療で
十分に閉塞した血管や競作した血管を十分に治療した場合は
過度の制限は必要ありません.
狭心症の場合、血液検査、心エコーなどで特に
心臓の負荷、負担の問題がなければ特に制限は必要ありません.
ただし、狭心症の症状が再発したり、車の運転中に狭心症が起こった場合は
運転は見合わせます.

急性心筋梗塞後の場合、冠動脈の閉塞により程度の差はありますが
心臓の筋肉、組織に壊死が起こっており、回復には時間を要します.
十分なカテーテル治療が完了していても
2週間から4週間は、車の運転は控えられた方が安心です.
血液検査の改善、心電図の改善、心エコー検査の改善をまって
十分な内服治療のもとに
主治医が 運転を許可します.
もちろん運転を職業としている方 タクシードライバー、宅配便の運転手、
パトカーを運転する警察の方、消防車、救急車を運転される消防署の方は
さらに慎重に対応する必要があります.
ちなみにイギリスでは6週間は、運転禁止とされています.
治療後も医師の指示に従って、内服治療を続けていただきます.
再発の少ないステントですが、内服する薬の副作用には注意が必要です.
厚生労働省から次のように指導がでています.
「CYPHER™シロリムス溶出冠動脈ステント留置後 無期限のアスピリン投与、
術後3ヶ月のパナルジン投与必要.
パナルジン投与で血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症、重篤な肝障害等の重大な副作用が、主に 投与開始後2ヶ月以内に発現し、死亡に至る例も報告されている.
ステント後、2ヶ月間は 2週間に一回の血液検査が必要」
具体的な検査や内服の調整は、外来通院しながら担当医が判断させていただきます.
次のような症状があった時には、できるだけ外来で担当医にお伝えください.

・熱が出る(37℃以上) ・あざができる(紫色・赤色)
・のどが痛む ・尿が茶色っぽくなる、血が混じる
・皮膚や目が黄色くなる ・意識が低下する(うとうとする)
・ぶつぶつがでる ・強い疲労感を感じる
・鼻や歯ぐきから出血する ・食欲がなくなる
パナルジン、アスピリンという薬そのものは、脳梗塞はその他の動脈硬化の予防のために
以前より使われている薬です.内服のみでなく、血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、運動
などその他の生活習慣の改善が再発の予防に最も重要です.